しばらくして、僕は就職活動の時期を迎えた。超就職氷河期と言われた真っ只中。学生指導課の担当からは、リクナビ、マイナビ、アイバック(当時の求人ポータル)に登録し、面接に伺うことはもちろん、100社エントリーして1社決まればいいという、今では考えられないことを全学生に向けて発信している時代だった。そんな中、僕は実家に帰ると1冊の本が居間のコタツの横に転がっているのを見つけた。そのタイトルは「人と違うことをやれ!」。当時、「朝まで生テレビ」など一線で活躍していた堀紘一の著書だった。親父が読みかけか読み終わったかという状態で放置されていた。当時の僕にとってその本は衝撃であり、刺激的であった。今となって振り返ればだが、僕は小学生の頃から「右へならえで落ち着かない」性格だったと思う。集団行動も得意なほうではなかった。だからなのか、その言葉一つ一つが全身に浸透してきた。そして、当時聞いていた音楽がDragon Ash。今で言うところの、ONE OK ROCKか。金沢にライブがあるということで友達と行くと、ステージの上で輝く降谷建志がたまらなくカッコよかった。同時にある種の疑問を持った。反対側で僕は手を叩いているという事実に。それから間もなくしてだった。車のトランクにYAMAHAのアコースティックギターを積み込んで金沢駅に向かったのは。駅で弾き語りを始めた。初めはドキドキだったが、いつしか一緒に演奏する仲間が増え、お客さんも集まるようになった。同時に、警備員からの撤収命令も日常的だった。小さくても主役になれるステージが欲しかった。とんねるずの「情けねえ」の歌詞にある「人生の傍観者たちを俺は許さないだろう」が、心の深いところで流れていたかのように。